こんにちは。この記事は下記記事の振り返りです。
引き渡しの際に撮影した写真と、平面図から起こした3Dモデルをレンダリングして得たシミュレーション画像を比較することで3Dモデルの精度を確認しました。3Dモデルには当時私が平面図をどう認識していたかがよくあらわれていました。この認識と実際がどう異なっていたかを観察することで、平面図の誤解しやすい場所がわかりました。
なお良かったこと悪かったこと編は別に書く予定です。
TL;DR
図面から起こした 3D モデルは細かな差異はあるもののおおむね正確です。日照や照明のシミュレーションでは十分使える精度をもっていると確認できました。この細かな差異は次のとおりです:
- 平面図には書かれていない部分(手すり・照明スイッチ・足元照明・コンセントの寸法と位置、床の高さなど)は推測でモデリングしているがその寸法・位置が実際とは異なっていた
- 平面図・カタログの見落としがちらほらあった(火災報知器など)
- シミュレーション画像では青空からくる環境光が再現されていなかった
前者2つを防ぐためには、床の高さのわかる図面、スイッチ・各種モニタ・足元照明の詳細な図面を要望するとより正確な 3D モデルを作れるでしょう。またカタログスペックとカタログの写真との比較も有効です。最後はどう修正すれば良いかわからなかったので、対応方法をご存知であればご教授願います。
実写と3Dモデルのシミュレーション画像を比較する
リビング入り口
おおむねよい精度でモデリングできていたようです。ただしよく見ると次の差異があります:
- シミュレーション画像では右奥の洗面台入り口がドアの上枠と揃っているが実際は揃っていない(原因:平面図では正確な指示がないため推測でモデリングしたところ実際とは異なる形状になった)
- シミュレーション画像に天井に階段下面の出っ張りはないが実際には出っ張りがある(原因:平面図では正確な指示がないため推測でモデリングしたところ実際とは異なる形状になった)
- ドアホンモニタの位置が異なる(原因:平面図では正確な位置の指示がないため推測でモデリングしたところ実際の位置からずれた)
- 実写にはある火災報知器が3Dモデルにはついていない(原因:図面には記載があったが見落とした)
- 奥の小窓の高さがずれている(原因:床の高さの推測値が実際の値よりも大きかった)
- 洗面台裏のハンガーポールの奥行きが違う(原因:引き渡し前に職人の方から図面よりもよい配置があると提案されこれを採用したため図面とは異なる施工になった。ありがたし)
- 実写は上の方が暗いが3Dモデルはそうなっていない(原因:床材のマテリアルの粗さが実際よりも高かった。言い換えると床からの光の反射が推測よりも指向性を持っていた)
平面図に記載がなく推測で補った部分に差異が出ていることがわかります。
キッチン
背面のカウンターの高さを勘違いして5cmほど高くモデリングしていたようです。VR で試した時はキッチンの調理シミュレーションをしなかったため気づきませんでした。また引き出しの取手がつかないと誤解していため3Dモデルには取手がついていません。カタログに掲載されている写真では取手があったので私の見落としが原因です。
ダウンライトの位置が違う気がしますが、3Dモデルのレンダリングに使ったカメラの位置と向きが正確でないことが原因かもしれません。
換気扇は正確な図面をもらっていないので写真からの推測でモデリングしているため差異が出ています。
階段
ここは前回の記事で3Dモデルでの照明シミュレーションにより曲がり角が暗い問題を発見した場所です。実写と見比べたシミュレーション画像の照らされている範囲は忠実に見えます。つまり修正前の図面のシミュレーションで曲がり角が暗かった問題も実際に暗かった可能性が高いです。照明のシミュレーションって大事ですね。
差異もあります。シミュレーション画像は実写よりも足元照明の色温度が高めになっています。照明の色温度は照明器具メーカーのカタログを見ればわかりますから、私の確認が十分ではありませんでした。
2F廊下
2F階段入り口はベビーゲートを設置する予定で図面では幅を確認していました。実際には手すりが干渉してつける予定だったベビーゲートをつけられませんでした。3Dモデルでも手すりの位置は実際より高くかつ奥についており、この事態を想定していなかったことがわかります。何度もベビーゲートつけたいという話はしていたのですが、手すりによりつけられなくなる事態は私、ハウスメーカーのいずれも気づいていませんでした。運よく取り付けられるベビーゲートを見つけられたのでことなきを得ましたが、取り付けられるベビーゲートは一種類しかなくオートクローズ機能のあるものを選べなくなったので事前に気づきたかったです。以下は取り付けられたベビーゲートですがオートクローズ機能はついていません。
実写では青空からの光で室内が青く照らされていますが、シミュレーション画像はほとんど青くありません。背景テクスチャは青空のものを使っていますがうまく再現できないようです。背景テクスチャからの放射のstrengthを調整しましたが、明るくなりはするものの青空の色はうまく出ませんでした。何かうまい方法をご存知の方がいたらぜひご教授願いたいです。
外構
外構は実写を載せたくないため画像は割愛します。
これまでの実写とシミュレーション画像との比較で最も差異が大きかったのが外構です。玄関ドアの材質の光の反射率やブロック塀の高さ、隣家との間のフェンスの高さなど図面には載っていないものが差異を生みました。いずれもハウスメーカーに要望しても返答の望みの薄い数値ですので、自分で測るほかありません。自分で測れない場合は差異が出るリスクを受け入れられるよう考慮しておくとよいでしょう。
脱線:シミュレーション画像と実写画像が重なるようにすると、実際のカメラとレンズの仕様と Blender のカメラ設定がなぜか一致しない
今回使ったカメラは SIGMA fp と 35mm F1.4 DG DN | Art です。
仕様によると SIGMA fp のセンサーの大きさは 36mmx24mm で 35mm F1.4 DG DN | Art の焦点距離は 35mm ですから、Blender のカメラもそのように設定すれば実写画像とシミュレーション画像が揃うはずです。実際にはセンサーサイズを揃えると焦点距離が 55mm ほどでないと画像が重なりませんでした。この差異の原因について心当たりがある方はご教授願います。
まとめ
図面から起こした 3D モデルはおおむね正確です。日照や照明のシミュレーションでは十分使える精度をもっていると確認できました。細かな差異を防ぐためには、床の高さのわかる図面、スイッチ・各種モニタ・足元照明の詳細な図面を要望するとよいでしょう。またカタログスペックとカタログの写真との比較も有効です。